フォトマル(PMT)からの信号はガンマ線のエネルギーに比例した電流ですが、電流はパルス状であり、積分値を求める必要があります。その回路は次の図のようになっています。
実際に流れる電流はこの回路からフォトマルに向かう電流で、IC8のオペアンプに接続されたコンデンサ(C39)が充電され、電荷量に応じた電圧がIC8の出力端子に現れます。その電圧はIC5Bのバッファを通して、マイクロコントローラ(STM32F207V)内蔵のADコンバータに接続され、デジタル値に変換されます。AD変換が終了した後、コンデンサに並列に接続されたトランジスタ(Q2)によりコンデンサの電荷は放電されます。
IC5Aのオペアンプを含む回路はADコンバータのDNL(微分非直線性)を補正するための回路です。マイクロコントローラ内蔵のDAコンバータにより0-30mV程度の電圧を変化させながら、コンデンサの電圧に加算してAD変換します。そして、デジタル値から加算した電圧を引き算するという操作で、DNLを補正します。
実際の波形は次のようになっています。
フォトマルに流れる電流を観測したのが次の画像です。この画像はTP2における電圧を測定したもので、R25をショートした状態で観測したものです。このパルスでは最大10mA程度で減衰時間が1μsec程度です。
このパルスの大きさは元のガンマ線のエネルギーに比例します。Cs137の標準線源をフォトマルにくっつけて測定したのが次の画像です。この画像はパルスを画面上で積算したもので色によりそのパルスが生じた回数が分ります。緑や青は回数が少なく、赤からオレンジは回数が多い事を示しています。
Cs137の全吸収ピークに対応するパルスはオレンジで回数が多く、それより電圧が低くなると回数が少なくなり、コンプトンエッジに対応する電圧より低くなると回数が多くなるのが分ります。
次にTP1における波形は次の画像です。この波形はR25をショートしていない通常の回路のものです。
このパルスの立ち上がり部分は光電流によりコンデンサ(C39)が充電される事によるもので、立ち下がりはトランジスタ(Q12)による放電によるものです。500nsec毎に生じている小さなヒゲ状のパルスはADコンバータの変換によるもので、パルスのどの部分がAD変換されているのか分ります。
パルスの積分とAD変換の時間は約3μsecで、この時間がこの測定器のDead Timeになります。