製作方法(ステンシルの作成)

Eagleで作成した回路データから部品の半田付け用のステンシルを作成します。基板に実装する部品の多くはSMD(Surface Mount Device)で、半田付けは半田ごてでも出来ますが、半田ごてでは付けにくい部品がある事や、接着強度、製作時間などからステンシルを作成しリフローオーブンで半田付けします。

ステンシルの作成はグラフテックのシルエットカメオというカッティングプロッタを使います。カメオ

カメオ(silhouette studio)に渡すデータは、Eagleのプログラムからcream-dxf.ulp(スイッチサイエンス製)のコマンドを実行する事で作成できます。拡張子が.dxfのファイルができますので、それをカメオ(silhouette studio)に読み込ます。その際、設定としてプロパティ>デフォルト>DXFのインポート時の設定>”ページに合わせてサイズを調節する”のチェックをはずします。使用する用紙とカットのパラメータは次のとおりです。

  1. 用紙:OHPフィルム PET/ 108μm プラス IT-120PF
  2. カット回数:同じデータで3回に分けてカットする。各カットの際厚みを6、12、17と順次厚みを増す。
  3. スピード: 1に設定
  4. カッターの刃の調整: 0.12

正常にカットできると次の写真のような仕上がりになります。

ステンシル全体

ステンシル拡大この写真は0.5mmピッチの100ピンTQFPパッケージの部分で穴の形は少しいびつですが、実用上は問題ありません。

【2016.8.24 追記】
現在は、基板作成時にステンシルを1,000円程度で作成できます。0.5mmピッチのICが入っている場合などは基板メーカで作成した方がいいと思います。

(小林一英)

ガンマ線: 走行データ(新幹線:名古屋-東京)

昨年(2012年6月)にGeoGamma220とほぼ同じ構成(2インチNaI+フォトマル)の測定器で測定したデータです。測定器を新幹線の床の上に置き窓際にGPSアンテナを置いて測定しました。名古屋-東京(2012)画像をクリックすると拡大します。

下のグラフで、左端が名古屋、右端が東京です。名古屋から段々にガンマ線強度は下がり、豊橋から平塚あたりまで最低ラインが続きます。途中大きく強度が上がっているのはトンネルです。そして平塚から東京にかけて、アップダウンはありますが、強度が上がていきます。この原因としては、中央右側のスペクトル画面で、わずかですがセシウム137の部分で盛り上がりがあるのと、過去の測定データ(「日本における地表γ線の線量率分布」を見ても平塚から東で強度が強くなる傾向が見られない事から、福島の事故の影響だと推測されます。ただ、影響があると言っても強度は関西の阪神間より弱いレベルです。

(小林一英)

ガンマ線: 走行データ(新幹線:新大阪-名古屋)

昨年(2012年6月)にGeoGamma220とほぼ同じ構成(2インチNaI+フォトマル)の測定器で測定したデータです。測定器を新幹線の床の上に置き窓際にGPSアンテナを置いて測定しました。新大阪ー名古屋(2012)

下のグラフで、左端が新大阪、右端が名古屋です。4箇所で計数率が高く、右側の名古屋に近い所3箇所で計数率が低くなっています。前者はトンネル、後者は木曾三川で、原発事故の影響のない地域ではトンネルで高く、河川で低くなります。

4本のトンネルのうち大阪寄りの3本はほぼ同じ計数率で、名古屋よりの1本(関ヶ原トンネル)では他より高くなっています。これは関ヶ原トンネルの地質が他の3本のトンネルと違うためだと考えられます。

左端で階段上に変化しているのは、低い部分は新大阪駅の構内で、列車が新大阪駅の東口を過ぎた辺りから高くなります。構内で低いのは列車の位置が地面から高い位置にあるためだと考えられます。

(小林一英)

ガンマ線: 走行データ(山)

測定器(GeoGamma220)を車に載せて六甲山(兵庫県)を走ってみました。その時のデータを専用の表示ソフトで表示したのが次の図です。

六甲山

下側グラフは横軸が時間、縦軸は計数率(cpm)で、芦屋市街からスタートし六甲山の頂上にある六甲ガーデンテラスまでのデータです。X軸の値が800付近で一番計数率が高くなっていますが、この付近は谷筋で、計数率が高いのは尾根に出るまで続きます。青の十字カーソルの点が一番値が低くなっていますが、この付近は完全な尾根筋で道路の両側が開けています。何故、谷筋でガンマ線量が高く、尾根で低いのかですが、測定点の周りがどれだけ岩石や土に囲まれているかという事だと考えられます。

走行する前のイメージでは漠然と頂上が一番線量率が高いだろうと思ったのですが、実際のデータは逆でした。ガンマ線は目に見えないので性質を理解するには色々体験する事が必要だと思いました。

(小林一英)

ガンマ線: 走行データ(湾岸)

測定器(GeoGamma220)を車に載せて、走行テストを行いました。ルートは阪神間の海と山で、西宮周辺の湾岸と六甲山です。テストには、比較のため、TCS-172Bという福島ではデファクト的なサーベイメータでの測定値も取得するようにしました。写真の左側がTCS-172Bでシンチレータは1インチです。右側はGeoGamma220でシンチレータは2インチで、ガンマ線の計数率感度は理論的には8倍です。

IMG_0979

TCS-172Bからはフルスケールで10mVのアナログ電圧が出ていますので、その出力をGeoGamma220のアナログ入力に接続して、同時にデータをサンプリングしています。TCS-172Bの測定パラメータはレンジは0.3μSv/h、時定数は10秒で行いました。

湾岸を走行した結果を専用の表示ソフトで表示したのが次の図です。地図上の青の線が走行ルートで、下側のグラフがGeoGamma220の計数率(cpm)、右側のグラフがエネルギースペクトルです。下側のグラフを見ると値が3か所でドロップしているのが分かります。図をクリックすると拡大され変化しているのが良くわかります。

湾岸

この3か所が何故低くなっているのかは、計数率を色分けして地図にプロットすると分かります。それが次の図で、色は計数率が高いほど暖色系、低いほど寒色系です。

TCS172Bとの比較

この地図を見ると3か所、青色の部分があり、そこはいずれも橋の部分である事が分かります。表示ソフトではグラフをクリックするとその値に対応する地点が地図上に表示されますので、値が下がっているのは橋の上であるという確認ができます。

下側のグラフで赤の線はGeoGamma220の値で、青の線はTCS-172Bの値です。横軸は時間、縦軸は計数率で、両者が同じような位置に表示されるようにTCS-172Bの値は倍率をかけています。青のグラフを見ると、赤に比べ、値の変化がなだらかで、変化量も少なく、変化する位置が橋の位置とずれています。両者のグラフの違いは1点の測定に要する時間が青(TCS-172B)は10秒で、赤(GeoGamma220)は1秒である事が主な原因だと考えられます。TCS-172Bで10秒かかるのは、この地域での線量率が0.05μSv/h程度で1インチのシンチレータでは計数率が低く、1秒では値のばらつきが大きくなりすぎるからです。

橋の上でガンマ線が弱くなるのは、ガンマ線を発生している岩石や土から距離が離れるのと水による減衰のためだと考えられます。

 (小林一英)

 

ガンマ線: 測定例(セシウム137)

セシウム137の標準線源(Cs401、10kBq)をセンサに密着させて測定した結果です。横軸はチャンネル番号で縦軸はカウント数です。この測定では4時間のカウント数です。半値幅は6.3%程度です。画像をクリックすると拡大表示されます。Cs137

(小林一英)

ガンマ線: 測定器(GeoGamma220)の構成

測定器は、写真のように、センサ(画像右側の円筒形)と基板の2つから構成されます。この構成の測定器をGeoGamma220と呼ぶ事にします。

シンチと基板

1.センサ

センサの円筒の中は、先端に直径2インチ、長さ2インチのNaI(Tl)シンチレータが入っていて、それに密着してフォトマル(光電子増倍管)が配置されています。赤のケーブルは600~1200Vの高電圧の電源ケーブルで、黒のケーブルはシンチレータからの光がフォトマルにより電流に変換された信号のケーブルです。測定器名の220は2インチx2インチから来ています。

2.基板基板2

基板ではセンサに高電圧を供給し、フォトマルからの電流信号をデジタルに変換します。デジタル変換されたデータは、GPS受信機から得られた位置情報と共に、USBを通じて、ノートパソコンやタブレット、スマホに送る事ができます。この写真は試作1号機でUSBホスト機能はありませんが、現在製作中の2号機ではUSBホスト機能を組み込みます。そのホスト機能を使う事により、USBメモリにデータを保存したり、BluetoothモジュールやWifiモジュールを装着する事により、無線でデータを伝送できます。

(小林一英)

このサイトについて

このサイトは高感度ガンマ線測定器の製作方法および測定方法について解説するためのサイトです。測定器の回路および制御ソフトはオープンソースハードウェア/ソフトウェアとして公開する予定です。

現在、準備段階であり、本公開に至るまで、概要や進行状況をこのブログでお知らせしていきます。

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